法務省東京入管の後援で外国人相談会を開催!

 

〜日本行政書士会連合会、25日に東京入管を会場に〜

  入国管理業務のエキスパートである行政書士が、在日外国人を対象とした新たな支援活動に乗り出した。全国の行政書士で組織する日本行政書士会連合会では来る10月25日、法務省東京入国管理局の後援を得て、品川の同局庁舎内を会場に外国人向け無料相談会を開催する。当日は外国人の入国・在留に関するあらゆる相談に応じるほか、来年から導入される新たな在留管理制度や東日本大震災に対応した特例措置などの案内も行われるという。同相談会は、東京入管という公的機関を会場に、入管への申請取次資格を有する行政書士を窓口として行われるため、留学生などの在日外国人にとっては、安心できる環境のもと、正確な情報に基づくアドバイスが受けられる絶好のチャンスとなる

■東京入管を会場に初の相談会

  法務省東京入国管理局が後援し、行政書士が主体となる形で、正規の在留外国人を対象に行われる相談会は史上初めて。東京入管の本庁舎を会場に開催されるのもこれまで前例がなく、日本行政書士会連合会の最大の下部組織として東京入管側との連携を模索してきた東京都行政書士会では「行政書士の存在意義を再認識してもらった結果(能登八郎・国際部委員)と受け止めており、今後の入管業務におけるモデルケースとも位置づける。

  行政書士は入国管理業務の専門家であり、訴訟などの法律行為を除き、あらゆる問題について在日外国人の相談を受けその解決に当たっていることから、公共性や社会性が極めて高く、当事者にとっては、いざという時に頼りになる存在だ。一方で留学生などの中には、過去に仲介ブローカーの被害に遭った実例も報告されており、直面している問題について安心して相談できる窓口と正確な情報の提供が、従来から課題となっていた。

■困難な問題や震災関連の相談も可能

  今回の相談会には、日本行政書士会連合会の傘下にある同会関東地方協議会と、東京都など関東エリア1都9県の行政書士会も主催者として名を連ねており、更に法務省東京入国管理局による後援と会場提供が実現したことによって、パブリックな意味合いは更に強まった。来場しての相談を希望する外国人にとっても、信頼性・利便性の高い活動となることが期待されている。当日は、入国・在留や永住、帰化、会社設立、国際結婚などあらゆる内容について相談が可能となっているが、来場者向けに提供される情報も、公的な支援制度に関するものを含め、多岐に渡る。

  同相談会の開催を企画した東京都行政書士会の古谷武志・国際部長によれば、「最近は、外国人にとってどう対処したらよいのか分かりづらい問題が増えている」という。例えば、外国人が勤務先企業を退職したり、日本人配偶者と離婚した場合、法務省が新たな在留管理制度を施行する来年7月以降は、在留資格取消の可能性を想定した対応が求められるようになる。また日本で新たな店舗などを立ち上げる際には、すでに永住権を有している外国人であっても、別途、営業許可証の取得手続きが必要なケースがある。これらの事情は、当事者にはあまり知られていないのが現状だ。また、近年増えている企業の売掛金の未回収を巡る問題や解雇、給与未払いといった雇用トラブルに対しては、請求手続きの方法が分からなかったり、裁判によらない紛争処理という手段があることを知らずに、泣き寝入りしてしまう例も多いようだ。

  更に、今年3月の東日本大震災で被災した外国人が、直面している課題も無視できない。震災によって配偶者を亡くしたり、会社の経営が行き詰まるといった状況に直面し、遺産相続、銀行融資などの問題で悩みを抱える人が出ており、東京都行政書士会では「大震災に対応し設けられた特例措置に関する情報や必要な申請手続きについても、相談会を通じて案内したい」としている。

■行政書士の存在意義をPR

  古谷部長は、留学生などから日常的に寄せられる声を通じ、「入国管理局に相談したいことがあっても、なかなか直接には聞きづらい」在日外国人の特殊な状況を痛感してきたという。そこに入管業務の専門家である行政書士が役立てるニーズもあるわけだが、外国人の中には行政書士の存在は知っていても、具体的にどのような局面でサポートが得られるのか分からずに、相談を躊躇していた人も多いようだ。

  今回の相談会では、東京都行政書士会国際部に所属し、東京入国管理局への申請取次資格を有する行政書士から、東京入管という公的機関において相談を受けられる形となるため、これまでは行政書士と直接的な接点を持たなかった外国人が窓口を訪れることで、自身の問題を解決するきっかけづくりにつながる可能性は大きい。

  各行政書士にとっても、外国人が誤った情報に惑わされることのないよう、入管申請に関する正しい知識を啓蒙し、的確なサポートを行うことで、その存在意義を幅広く知ってもらう好機となる。東京都行政書士会では来る11月にも、銀座と品川で2度に渡り、恒例の「外国人行政手続き相談会(ビザ・帰化等に関する無料相談会)」を開催する計画で、様々な問題を抱える在日外国人に対し、一人で悩まずに気軽に会場へ足を運ぶよう呼びかけている。

  一連の無料相談会は、入国管理業務のエキスパートである行政書士が、外国人の相談窓口としての機能を更に向上させていく上で、重要な節目ともなりそうだ。

 
 

【解説】
 
日本行政書士会連合会などが主催する外国人向け無料相談会が、法務省東京入国管理局による後援を得て、同局内で行われるという画期的な開催形態に至った背景には、行政書士会側によって自主的に行われてきた様々な取り組みがある。2009年末、一部行政書士による不祥事を機に東京都行政書士会が立ち上げた「申請取次業務適正化委員会」は、コンプライアンスに問題のある会員に対して入管申請取次業務に必要な証明書の自主返納や資格停止などを勧告できる権限を付与され、刑事処分においては不起訴となった事例も含め、これまでに約20名の行政書士に対し事実関係の聴取に基づく厳正な処分を行ってきた。東京都行政書士会によれば、こうした自助努力は着実な成果を上げ、昨年7月を最後に、同会内で所属行政書士の不祥事は起きていないという。

  そもそも行政書士は、留学生など外国人にとっては入管業務の専門家であると同時に、困難な状況に直面した際に相談できる窓口としての存在意義が大きいが、東京都行政書士会ではこうした役割機能をさらに向上させるべく、地下鉄・銀座駅頭で「外国人行政手続き相談会」を定期的に開催するなど、法務省・入管当局の支持を得てきた。10月の相談会における両者の連携は、この間における信頼関係の積み重ねが実を結んだ成果と言えるだろう。

  だが、課題として今後に積み残されたテーマも多い。第1に、今回の相談会の開催地が東京都に限定されたことである。当初の計画段階では、関東地方の入管出張所が所在する各県庁所在地などにおいても同時開催する案が浮上したが、諸般の事情から見送りとなった。関東地区の留学生だけを例にとっても、東京都以外のエリアに在住している外国人は2万人超(22478人、平成22年度文部科学省統計)と極めて多い。日本行政書士会連合会関東地方協議会では、今回をテストケースと位置づけ、良好な反応が得られれば、次年度以降の拡大開催も視野に入れているという。将来的には関西や九州、中部エリアなど、他の地方入管における開催の先駆けともなりうるのではないか。

  第2に、外国人コミュニティの中で恒常的に幅を利かす不確かな情報や根拠のない噂の流布に、行政書士会としてどう対処していくのかという課題は依然として大きい。インターネットなど情報収集のルートが多様化するにつれ、外国人にとっては逆に正確な情報が何なのか、見極めにくくなってきている側面もある。入管業務の専門家であり、同時に困ったときのゲートウェイでもある行政書士の公的な役割をどうPRし、外国人に知らしめていくのか。様々なチャンネルを通じた宣伝活動も必要となろう。

  第3に、年々増加する外国人への対応を念頭に、弁護士との明確な役割分担、そして協力態勢の構築が長期的課題として挙げられる。現在、入管業務においても、裁判など法律行為を要するものについては弁護士の所管とされているが、例えば在留特別許可の最終手続きである口頭審理においては「行政書士が外国人本人の代理人となれない慣例があるため、結果として本人が不利益を被るケースもある(関係者)」という。既存の枠組みを変えるには日本弁護士連合会(日弁連)の同意が必要で、交渉は紆余曲折が予想されるが、東京都行政書士会の古谷武志・国際部長は、「在日外国人の利益を擁護するという観点から、双方が共に取り組むべきテーマは多い」として現状の打破に意欲を見せる。弁護士と行政書士という業界の垣根を超えて、双方が合意できる協力態勢を築き上げていくことができるかどうか。行政書士会の真価が問われるのはこれからだ。(白石誠)